2015年度の刀剣美術誌上鑑定所感

3月の鑑定所感

2016.3.12

先月号の答えは「長船兼光」の短刀で当たりでした。

今月号の刀は刃文から見ていくことにします。特徴なのは箱乱れを焼く刀工と云うことで、末古刀では村正が居ますし、新刀では兼若も箱乱れを焼きます。中心についてヒントでは「官職銘を冠した長銘を二行に切り分け、その下に花押を据える」とあります。これは兼若の高平銘に共通する処です。そこで今回は「越中守高平」と致します。

2月の鑑定所感

2016.2.14

先月号の答えは「保昌貞興」の短刀で当たりでした。
また、12月号では「家助」でも当たり扱いと云うことで大変結構でした。

今月号の短刀は身幅尋常ながら重ねが薄く反りが浅くついていることから南北朝期でしょう。刃文は逆がかった互の目や、角互の目・片落ち互の目が交じっていますね。この処を見ると長船兼光と思われますが、ヒントでも”身幅広く大きく寸の延びた作例も数多く経眼される”と延文・貞治の体配を云っているので、今回は「長船兼光」の短刀と致します。

1月の鑑定所感

2016.1.09

先月号の答えは「長船盛光」の脇差でした。家助はちょっと考えすぎでした。

今月号の短刀は、姿形から鎌倉時代後期と見られ、地鉄は柾目で、刃縁の働きや帽子が焼詰めとなることから大和物で、中でも保昌派に当てはまることでしょう。そこで今回は「貞興」の短刀と致します。

12月の鑑定所感

2015.12.11

先月号の答えは「長船秀光」の太刀と云うことで当たりでした。小反りの刀工に入札すればたぶん大丈夫でしょう。

今月号の脇差は、身幅の割に寸が延び、先反りがつく姿や、区上で丸止めの樋や、焼刃の腰が開く処からも応永備前と思われます。応永備前の刀工では、盛光・康光が代表工となりますが、今月号は如何なものですかね。角張る刃が交じる処など、家助にも見えますが。ここは、盛光・康光を外して今回は備前長船の「家助」の脇差と致します。

11月の鑑定所感

2015.11.13

先月号の答えは「古備前友成」の太刀で当たりでした。

今月号の太刀は、まず乱れ映りが立っているので備前物と見てよいでしょう。刃文は刃幅が狭くこずんむ感じがします。ヒントから、刃幅低い、地景太く変わり鉄状に入る等、姿と合わせて小反り物と云った感じがします。また、中心の銘字には逆鏨は見られないとありますが、これは分かりません。小反りもので銘字に逆鏨が見られない刀工では、秀光や、次行が挙げられますが、外にも刀工はいるでしょう。と云うことで今回は「秀光(小反り)」の太刀と致します。

10月の鑑定所感

2015.10.9

先月号の答えは「初代和泉守国貞」の脇差で、当たりでした。

今月号の鑑定刀は、元先の幅差が開く、腰反り高く踏張りあり、先へやや伏さり気味等、体配より考えられるのはかなり古い太刀ですね。藤末鎌初となれば、三条とか古備前・古青江が思いつきますね。地鉄や中心から、三条や古青江は除かれます。古備前では地鉄に黒味があるのは友成なので、ここは古備前の「友成」と入札致します。

9月の鑑定所感

2015.09.12

先月号の答えは栗原信秀の刀と言うことで当たりでした。
さて、今月号の所感ですが。刃文は元を直ぐに焼出しその上は湾れに互の目を交え尖り心の刃も見られ、帽子は尖り心に返っていますね。関風の感じがしますね。また、棟焼のかかるものが多いとなると「初代 和泉守国貞」でしょうね。

8月の鑑定所感

2015.08.10

毎日の猛暑で刀を見に行こうなどと思いもしない日々が続きまいっています。
7月号の答えは長曽祢虎徹の脇差で当たりでした。
さて、今月号の出題刀はと云えば、ヒントから時代を新々刀期と捉えられるでしょう。特にフクラが枯れる処などは清麿一門が思い当たります。更に、刃文は角張る刃や互の目の焼頭に尖り刃を交えるなど角々しい刃取りが見られ特徴的なので、ここは「栗原信秀」に見て取れます。

7月の鑑定所感

2015.7.13

6月号の答えは古三原の政清の短刀で当たりでした。
さて、今月の脇差ですが殆どの方が一見してお解りのこと思います。有名な脇差ですね。大鋒だからと言って慶長新刀ではありませんよ、国広ではありませんよ。そう「虎徹」です。銘文は「彫之同作 長曽祢興里虎徹入道」、はね虎銘です。因みに彫物の大黒天は、堀川国広も得意としていますが、国広の場合は大黒天は俵の後ろ側に乗っていますが、虎徹のそれは俵の前側に乗る処に違いがあります。

6月の鑑定所感

2015.6.12

5月号の答えは「出羽大掾国路」の脇差で当たりでした。
今月号の短刀ですが、体配は身幅広く寸が延び、重ね薄く反り浅くつく、と云うことから南北朝期のものと分かります。刃文は直刃で、刃縁がほつれ・喰違刃ごころが見られると、大和系がします。匂口が締まりごころや、地鉄に杢目が目立つことで、大和の傍系である古三原と見られます。古三原なら誰でもOKでしょうがここは「政清」と致します。

5月の鑑定所感

2015.5.14

4月号の答えは「多々良長幸」の刀で当たりでした。
さて、今月号の平脇差ですが、姿形から江戸時代初期のものと考えられます。帽子は三品風となるので、金道系や出羽大掾国路が考えられます。刃文は矢筈風が見られること、また、逆がかるとあります。更に中心の鑢目が化粧風が付くとなれば「出羽大掾国路」と入札したいです。

4月の鑑定所感

2015.4.13

3月号は「良西」の短刀で当たりでした。昨年度は全て当たりを取れ良い仕事ができました。
さて、今4月号より平成27年度のスタートと成ります。
今月号の刀は丁子に腰開き互の目の刃文から末備前風に見えます。しかし、ここでは元先の幅差が開くことや、鎬地が柾となると云うので寛文新刀と考え、匂口が締まった刃と云うことで光平ではなく長幸と見るべきでしょう。ここは「多々良長幸」と云うことでいいのでしょう。

2015年度 入札鑑定結果
月号刀問い答え
4月多々良長幸当り
5月出羽大掾国路当り
6月古三原 政清当り
7月虎徹当り
8月栗原信秀当り
9月和泉守国貞当り
10月古備前 友成当り
11月秀光(小反り)当り
12月長船家助当り
1月貞興当り
2月長船兼光当り
3月越中守高平当り